2022 年度新卒研修を実施しました
クラスメソッドでは 2022 年度も新卒研修を実施しました。この記事では、開示できるすべての情報をお伝えします。研修の実施に課題を抱えている方の助けになれば幸いです。
目的
オープンな発想と高い技術力を持つ人間となるための土台を作る
- 割り当てられた業務をやってみることができる
- 業務遂行に必要な知識とスキルセットのベースを持っている
- やってみることによる信頼の獲得をわかっている
- 業務とは何かに対する答えを持っている
- 仕事を楽しむことができる
- 健康の価値がわかっている
- やりたいことが見つかる
- 同期や先輩など、仲間ができる
- CLP の各項目を具体例を用いて説明できる
オープンな発想と高い技術力という文言は経営理念にも書かれており、クラスメソッドの従業員すべてが実現すべきことです。新卒メンバーが早く実現できるよう、新卒研修の段階で素地を作ろう、という想いをこめました。
また、 CLP は行動指針や価値観として明文化されているものです。クラスメソッドだけでなく、世間一般でも CLP ベースで行動すれば成果を出しやすいものだと我々は確信しています。そのため、新卒メンバーには早い段階でぜひ身につけてもらおうと思い目的に含めています。
これらの目的の出どころは、実は代表横田からの想いです。次のメッセージを受け取りましたので、ベースにしつつ、新卒メンバー向けにアレンジしています。
- 業務で必要となる知識とスキルセットの習得を必須とする
- 興味をひくことを自律的に学べる環境づくり
- 育成を大切にし、全社で学習者をバックアップしていく
期間
- 設計期間は 1 月から 3 月の 3 ヶ月間
- 実施期間は 4 月から 6 月の 3 ヶ月間
- 全新卒メンバー共通の研修が 4/15 まで
- エンジニアが対象の研修が 4/18 から
担当
次の担当分けとしました。
対象 | 担当部署 |
---|---|
全新卒メンバー共通の研修 | エンプロイーサクセス部 |
エンジニア向けの研修 | エンジニアリング統括室 |
カリキュラム
公開できる資料については、名前のところにリンクを貼っています。参考にしていただければ幸いですが、ご自身の責任においてご使用ください。
全新卒メンバー共通
名前 | 概要 |
---|---|
就業規則、労基法 | ルールの把握 |
コンプライアンス研修 | コンプライアンス違反を起こさない |
タイピングの高速化 | タイピング速度は筋肉、筋肉はすべてを解決する |
ビジネスマナー研修 | 期待を下回らないようにマナーを身につける |
ダイバーシティ研修 | 多様性を受け入れ、ともに成長してもらう |
ストレングスファインダー研修 | 自分と強みを活かした成長、チームメンバーの強みを活かしたチーム運営を目指す |
カルチャー研修 | クラスメソッドのカルチャーを理解する |
ブログ攻略研修 | 呼吸するように記事をかけるようにする |
フィードバック研修 | フィードバックを正しく受け取り、相手にあったフィードバックをする |
相手の期待に応える | 相手の期待に応えることの大切さを、新卒採用ページを作ることを通じて実感する |
目標について | これからのキャリアを考える |
LT 大会 | 発信することの面白みに気づく |
顧客に関わる研修 | 早い段階でお客様への価値提供と仕事内容をつなげて意識する |
エンジニア向け
名前 | 概要 |
---|---|
エンジニアの教養 | エンジニアとしてより高いところを目指すための知識を学ぶ |
Linux 基礎 | すべての作業の必須スキルとなる CUI による操作と結果の把握を習得する |
AWS 基礎 | AWS の各サービスを用いたシステムについての会話ができるようになる |
クラウドセキュリティ | セキュリティインシデントを未然に防ぐための知識を習得する |
SQL 基礎 | 適切にデータベースを操作できるようになる |
Git / GitHub | IT 職の前提となっているバージョンコントロール、およびチーム開発の基礎である GitHub の使い方を習得する |
ソフトウェアテスト | ソフトウェアの品質担保を実践するための知識を習得する |
開発プロセス | どうすれば開発プロセスを効率化できるかを考えるための知識を習得する |
読みやすいコード | 保守性の大切さを理解し、保つための方法を習得する |
コードリーディング | 既存プロジェクトにおいて迅速に立ち上がるためのスキルを習得し、アクセス可能な知の幅を大きくする |
チーム開発によるシステム構築 | 利用者に価値を提供するために、チームで協力してソフトウェアを開発することを学ぶ |
お客さまとの関わり
早いうちにお客さまへの価値を考えられるよう、新卒研修のうちにお客さまと触れる機会をできるだけ作りました。具体的には、各部で懇意にさせていただいているお客さまとの打ち合わせの場に同席させていただけるようお願いしました。
ただその場にいるだけ、ということにならないよう事前に次の問いかけを投げかけ、その日の終わりに回答を共有してもらいました。
- お客さまとクラスメソッドの関係
- お客さまが抱えていらっしゃる課題
- お客さまに対して現時点の自分が提案できること
その他の工夫
エルダー制度
新卒の伴走者として安心感を提供し、一貫したコミュニケーションを提供する役割として「エルダー」を用意しました。過去の新卒研修では各部署による研修を順番に実施していたのですが、そのたびに関係者がリセットされるため、いざというときに相談しづらいという課題がありました。エルダー制度はこの課題を解決するための施策です。
また、コロナ禍におけるコミュニケーションのサイロ化を防ぐために、斜め軸のコミュニケーションパスを設けようという意図があります。
やってもらったことは次の通りです。
- 毎朝のミーティング
- 1on1
- Slack における質疑応答
髙野のアドバイスにより、過去の新卒メンバーと、それより数歳年上のメンバーにお願いしました。目的どおりの効果があったと意図しています。
新卒メンバーの能動的な参加を促す仕組み
新卒メンバーには各研修の開始直前に次の内容のアンケートを配布しました。
- 対象となる研修の名前
- 特に興味をひいたものはなんですか?また、逆に興味がわかなかったものがあれば教えてください
- 特に自分や自分の目的と関連していると思ったものはなんですか?また、逆に自分から遠く関心が持てなかったものがあれば教えてください
- 特にうまくできたことやポジティブ・フィードバックが印象的だったものはなんですか?逆に、うまくできなかったことがあれば教えてください
- 特に満足したものはなんですか?逆に、不満足だったことがあれば教えてください
- その他、研修をより良くするために気づいたことがあれば教えてください
ARCS モデルをベースにして作成しています。研修をきちんと聞いてもらうための意識付けとして、直前の案内を心がけました。
ただ、アンケートには率直な意見を書いてもらいたかったため、次の断りを入れています。
新卒研修の各コースをより良くするためのアンケートです このアンケートの回答がみなさんの評価に使われることはありません ぜひ様々なご意見をください?
アンケートの集計結果はこのブログの後段で紹介します。
配属先の負担を減らす
配属先の負担を減らすことを目的として、次の情報をお渡ししています。
- カリキュラム
- エルダーからの申し送り事項
- 目指している方向性
- 今習得しているスキルセット、知識
カリキュラムを渡すことで、新卒がどのような経験を経て配属されたかを把握しやすくしています。また、配属先のメンターが新卒とのコミュニケーションを図るための助けとなるよう、機微な情報を除き、新卒に関する情報はすべてお渡ししています。
今年度得られた知見
振り返りやアンケートの集計結果から得られた知見を共有します。
全体
- 研修の進め方を先に提示することで混乱を最小化できる
- カリキュラムの開示
- 1 日の動き方
- 事前に準備するもの
- できるだけフィードバックすることで達成感を感じてもらいやすい
- 答えを教えるのではなく、よりよくするためのヒントを提供する
形式
- 能動的に考えたり、手を動かす時間があると楽しさや達成感を感じてもらいやすい
- はじめて触れる内容については、講義を先に実施し理解を深めてからのほうがよい
- 具体的な例
- ハンズオン
- 演習
- モブプロ
- 大勢でやるとスキルセットの差が進行の障害になるため、少人数にわけて実施すると良い
- 質問しやすい雰囲気、仕組みを作ることで能動的に参加しやすくなる
- 複数人で研修を実施するなど、質問しやすい体制を作る
- 講師と別に進行補助役を置き、トラブル対処等の本筋に関係しない問題解決を補助する
- 研修の時間配分を余裕を持ったものにするなど、質問しやすい雰囲気を作る
- 研修終了後に Ask the Speaker の時間を作るのは効果的
- 複数人で研修を実施するなど、質問しやすい体制を作る
- 特定の課題やテーマについて、講師自身の取り組み方を伝えるだけでも興味を持ってもらえる
- 他の新卒メンバーのやり方が見えるような方法だと参考情報が増え、助け合いになるため、なお良い
- リモートでも受講者の様子を把握しやすい環境を工夫するとフォローしやすい
- Gather 等、状況を把握しやすいツールを利用する
カリキュラム内容
- 実務で使うものは段違いに興味を持ってもらえる
- どういう状況で使うか
- どう使うか
- 基礎的な内容だけでなく、発展的な内容や最新情報を盛り込むと興味を持ってもらえる
- 深さを追求したり、網羅的な内容とするのもよい
- 抽象的な話しだけでなく、実例も交えて伝えるとわかりやすい
- 他のコースとの相乗効果を意識したカリキュラムを作ると、より興味を持ってもらえる
- 内容について、新卒が履修済みかどうかを考える必要はあまりない
- 新卒研修ということもあり、ベースラインを整える目的でなぞる
- 復習として受け取ってくれる
- 発展内容や演習、ハンズオンなど好奇心を刺激する工夫があると、最後まで飽きずに身を入れてもらいやすい
振り返りとアンケートの集計結果
次は新卒メンバーとエルダー、エンプロイーサクセス部、エンジニアリング統括室が一緒に実施した振り返りの結果です。
以降の円グラフは、各研修終了後に新卒メンバーに答えてもらったアンケートを集計したものです。
これから
今年度の評価
新卒研修完了から 3 ヶ月が経った 10 月を目処に、研修の内容がどの程度役に立ったのかを調査するサーベイを実施予定です。これにより Kirkpatrick モデルの Behavior を評価予定です。
また、 Kirkpatrick モデルの Results を測定するために、 10 月を目処に配属後のメンターにサーベイを実施予定です。その際のサーベイ項目は新卒研修の目的をベースとすることを想定しています。
来年度に向けて
各研修をより深め、理解度テストを整備すべきかと思います。準備が 1 月からだったので、理解度テストまで整備できた研修はほとんどなかったためです。
各研修間のシナジーを高めるような構成や内容にすることも必要かと思います。今年度については、とにかく現場で使うであろう内容を詰め込んだカリキュラムとなってしまったため、伝えっぱなしになってしまった内容もあると思っています。
また、新卒研修とは別にしたほうがいいかもしれませんが、この期間に各部をより理解し、配属希望を考える際に役立ててもらえる時間を作成すべきと考えています。